キリンソウと四季の彩り日記屋上緑化システム株式会社
技術顧問 山下 律正
28 No8質問回答 キリンソウはなぜ使われるのですか?
No8質問回答 キリンソウはなぜ使われるのですか?
化学突然変異育種講座を見ていただきありがとうございます。
6月3日より「化学突然変異育種講座」を開始し一か月の間に500件近くのアクセスを頂き100名様近い方の興味を頂きまして感謝します。
質問も多くいただきましたので、「突然変異手順」の特集中ですがご質問の回答を先に致します。なお問合せ個人情報は伏せさせていただきます。
読者よりの質問
Q:キリンソウはなぜ使われるのですか?
回答
キリンソウは古代より薬用・食用と利用されてきました。2000年頃より盛んになった屋上緑化に利用されはじめ、現在はこの用途が中心となっています。
回答では、薬用は次回に説明し、今回は利用用途の多い建築緑化用途について解説します。
キリンソウが屋上用途で注目を集めたのは種苗登録品種 藤田1、号2号 商品名「常緑キリンソウ」の出現からです。キリンソウはそれまでのセダム屋上緑化が劣るひでり耐性・蒸れ耐性・冬季緑葉の現象を解決する画期的品種として注目を集めました。
安価で軽量な屋上緑化は軽量にするため、トレー式が主流で内蔵する土壌の厚さは平均3cmと薄く・軽く設計されています。そのため夏季の直射光下では水分がすぐ蒸発し、土壌が少ない事から表面温度が50℃以上に上昇します。
不幸にも夏季では、降雨後の快晴時には急激に温度が上昇し、土壌の高温と高湿度により、植物が蒸し焼き状態となり「蒸れ」が発生します。
セダム緑化の蒸れ状態
このように高温・乾燥・蒸れの起こりやすい環境に適した植物は、サボテンに似た植物が有望です。2000年当初導入されたセダム類は乾燥には適応しましたが、高温・蒸れには適応が追随できず枯損が発生し問題になりました。
そこに登場したのがキリンソウでした。
キリンソウは根が太く、茎が太く、丈が高く風通しが良く湿度が籠らず、葉が大きく厚い事から日陰効果で土壌温度が上がり難い特徴も併せ持ちひでりに対応できる草姿をしています。さらにCAM代謝で乾燥時の昼間に気孔を閉じる事ができ体内の水分蒸発を抑制できる機構が有ります。乾燥に強い草種である事からセダムに代わる緑化植物と言われています。
キリンソウは草姿が大きく、じょうぶな事から日陰効果も大きく、
省エネ効果の大きい植物として注目されています。
2012年8月17日 ひでり期間の地面温度、既存セダム緑化面温度、キリンソウ緑化面温度の違いを見てみると
2012年8月17日 14:40 ひでり期間中の観測
地面土壌温度 59.6℃
セダム屋上緑化システムの表面温度
2012年8月17日 14:47 57.6℃
ひでりにより枯損がはげしい
キリンソウの屋上緑化システムの表面温度
2012年8月17日 14:49 38.8℃
キリンソウは、ひでりによる枯損は発生していない
キリンソウで緑化すると
地面に対し :20.8℃低い
既存セダム緑化に対し:18.8℃低い
キリンソウはひでりに対し強く、葉が枯れずに地面を覆い日陰効果で温度を下げる。
セダム緑化は長期間のひでりに弱く、枯損が進み、土壌面温度も上がる。
キリンソウ緑化を選択した場合、ひでりに強く、夕立後の蒸れにも耐性が有る。
欠点は、開花後に剪定が必要 メンテナンス費用が発生。
現在、化学突然変異にて剪定不要の省メンテナンスキリンソウを開発している。
後のページで紹介します。
技術顧問 山下律正