キリンソウと四季の彩り日記屋上緑化システム株式会社
技術顧問 山下 律正
30 EMS突然変異実験 ⑤処理期間と温度
1 突然変異処理手順
⑤ 処理期間と温度
植物の化学突然変異実験は育苗器があれば年中できると思っていませんか?
正解はできます。
なぜこんな質問をしたかというと、育苗はできるのですが、突然変異発生率は一定ではないのです。
特に処理の条件の中でも季節、処理時間は大きな要素を含んでいます。
植物の成長過程の中で、薬剤や放射線が特異的に細胞に作用する時期を細胞分裂の盛んな時と判断するのは間違いではありませんが、これまでの実験を通じてキリンソウに対しては化学突然変異を実施する時期は、細胞分裂が始まる直前に作用させるのが最も有効と判断しています。
皆さんは各自の実験を通じて判断ください。その時注意しなければならないのは、遺伝子の修復作用です。発生した変異を戻し正常にしてしまいます。
逆に、新たな突然変異が同一株より継代で新規に発生する非常に稀な個体も変異体の1/100~200の確率で確認しています。
この個体を識別して確保できれば数年にわたり新品種の分離が可能となります。
チャレンジしてください。
突然変異した経年株より発生した新規突然変異
突然変異で作出したキメラ株より発現したアルビノ
季節
植物を突然変異処理する場合、生長点の活性度と、突然変異薬剤の活性時間が最適に適合させる事が重要になる。
成長点の活性度は高ければ良いのではない。
これまでの結果より、成長点は活性前の段階が最も良い結果を得ている。推測するに盛んに分裂が始まると遺伝子に作用する前に染色体の組合せが始まり遺伝子の組み換え効果が出ないのか、遺伝子の修復機構が働き組み換えた場所を修復するのではないかと思われる。
経験的に2月から4月の間は成長開始前で修復が緩慢成果なため効果が大きいのではないかと思われる。6月~9月の夏季では効果が劣る、もしくは発生しても成長の伴い遺伝子修復が見られる。
処理温度と時間
化学変異剤処理時間は、「No5 質問回答:できた植物は安全ですか?」で説明した
アルキル化剤の半減期を参照に温度と時間による可使時間を判断頂きたい
参照文献:人為突然変異 田中義麿 著 1938 養賢堂
を参照に浸漬時間を決めると良い
薬剤濃度
化学変異剤濃度が上がれば浸透圧で枯死する
濃度が下がれば処理時間は長くなる。
化学変異剤浸漬時間は 試験季節、pH、処理数量、試験中の放置温度、 洗浄方法、により変わる。
一例
試験季節 : 2月~4月
試験時間 : 3hr~24hr
変異剤濃度(EMS) :100~3000%
pH : 3~7
処理数量 :100体
試験中の保管温度 :10℃
洗浄回数 : 3回
試験条件は、対象植物の品種、使用薬剤、添加剤により変化します。
当ブログは化学突然変異実験の手法紹介であり、参考にして実験した結果を保証するものではありません。
試験は発がん性物質を使いますので、適合資格者が取扱い責任を果たし、自己責任で行動してください。
次回は
⑥ 添加剤 ホルモン剤について解説します。
技術顧問 山下律正
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