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キリンソウと四季の彩り日記屋上緑化システム株式会社
技術顧問 山下 律正

中国の緑化企業支援 第7回 中国深圳地区で入手できない緑化材料 透水改良材の現地生産技術支援

日中緑化資材技術支援 大学客員研究員の奮闘

 

深圳は香港に隣接する中国第3位の商工業都市で香港と併せて一大商業圏であるが

地形を見るとリアス式の半島で土質は赤土に属する。

保水性の高い赤土はそのまま緑化には使えない。広い中国なので材料はどこからでも入手できるが、

砂を含めた改良材は全て陸送するか船輸送となる。地区で調達可能なのは剪定くずで作られる堆肥だけの状況であった。

培土の原料となる透水性材料の軽石、パーライトは中国の北部で産出され陸送コスト、保管コストを考えると多用出来ない。

除草裁断片・伐採裁断片たい肥類も他社も使用しておりコストで優位性を出す事にならない。

相談を受けたのは、他社培土と比べコストが安い商品の開発が深圳地区で出来ないかであった。

これが実現すれば緑化シェア獲得の最重要課題であるコスト競争に勝てることが判る。

そこで提案したのは、現地で調達できる材料でコストが下げる恩恵がある助成金が出されている

下水処理場の脱水ケーキの利用状況であった。

深圳地区での下水脱水ケーキの利用状況を調査すると、焼却し灰を埋め立てに全量使用している。

償却費は補助金として交付されているので、自社で処理できれば助成金を受けることができ、

生産した製品も販売で利益を得ることができる。脱水ケーキ中の重金属は検査して合格であるが、

重金属が含まれる割合が少ない深圳に数か所点在する下水処理場より、住宅地の下水処理場の物を選ぶことが可能であった。

深圳地区 下水処理場

培土への透水性改良と、増量に脱水ケーキと焼却処分した灰の両方から多孔質透水性材を作る事で技術支援を行う事とした。

培土への脱水ケーキを利用は団粒化して使用する事も考えられるが、生産設備に多額費用を投入できない。

また、新たにこのための工場施設土地が無い、焼却灰の利用は助成金が支給されるか不明などの未知数の点が多い。

脱水ケーキから多孔質透水性材を直接作れば助成金が給付され、多孔質透水性材製造コストを賄え

製造原価ゼロで作り上げることができる事から、多孔質透水性材製造の方向で製法研究と製造場所の選定にあたった。

透水性材料の製造は、ただ固形化すればよいのではなく、透水性材料を作る事に有る。

製造には脱水ケーキと粘土を混ぜいわゆるレンガと同じ粘土を作り、これを焼結する工程を経るが、

透水性を出すには、材料の大きさと焼結温度管理が重要となる。

連続製造するには、

① 均一1cm程度の小粒粘土粒を作り、

② 物性を出すには、表面から中心部まで均一な焼き上げでスポンジのような連続透水性を持たせる事、

③ 適度な硬さがある事が条件となる。

汚泥から水分を取り除く脱水ケーキ機器

製造方法はすでに日本では確立されており問題ないが、本計画は中国で既存の焼成施設を使用しての

製造でコストをかけないのが前提で焼成設備と条件調査を進めた。

計画が進むにつれて、多孔質透水性材製造方法を焼結ボール製造設備、

レンガ製造設備のどちらを採用するかで中国側と対立が起きる。

私は焼結ボール(陶粒)方式を推薦した。理由は深圳近郷に郷鎮企業(村や自治体が中心に成立した会社 

中国の農村ではこの形態の会社が多い)の焼成工場が点在し、脱水ケーキを焼いた時に発生する強烈な臭いに対し、

郷鎮企業なので周辺に製造に伴う臭気の配慮が不要で、製造工程の最も重要な要素の焼成温度と

時間つかさどるローターキルン回転を、回転させるモーターにインバーターもしくはプーリーを新設するだけで管理が可能となり、

少ない出費で既存設備を改良する事無く、品質もプーリーの段数移動あるいは、

インバーターの周波数調整で軟質焼結ボールから硬質まで簡単に製造可能となり、

製造速度が速く商品もローターキルンから直接屋外に山積で保管でき在庫管理できる。

交渉も郷鎮事業者が相手で主導権を取れる点を勧めたが、中国側はレンガを作り破砕して細粒化する方式で譲らず、

中国側が納得するまで自らが推薦する方式で実施する事で結着。

技術支援が必要な場合は要請して来る事でお手並み拝見とした。

その後成功のカギとなる温度管理について問合せ連絡が無い事から事業は行き詰ったと推測している。

郷鎮企業の原料置場 製造方法は素焼ボール(陶粒)と同じ

粘土に発泡剤を混ぜて粒子状に成形し1000℃~1200℃で焼成 発泡した焼成ボール(陶粒)を作っている。

焼結ボール(陶粒)製造郷鎮企業  粘土置場 乾燥場

郷鎮企業の工場

工場内部 左下から粘土を中央造粒機入れ、小型ローターで造粒し、

ベルトコンベアーでロータリーキルン(右から)左に円筒形の筒状のもの)に入れ焼結する

完成品は粒の大きさごとに野積みされ袋詰めされる

培土に使用する焼結ボール(陶粒)は、郷鎮企業が作った焼結ボールは透水性が無いので使えない。

理由は高温で焼き過ぎているため、内部構造が独立気泡で透水性が低い点にある。

使用目的は、赤土の透水性改良であり焼結ボールの内部構造が連続気泡にする事が必要なのだが、これが極めて難しい。

その理由は焼結温度管理に有る。

連続気泡を作るには950℃~1000℃で焼結する必要がある。

日本では連続焼成炉で管理ができるが、中国の郷鎮企業では温度は高い方向に管理され、固い焼結品の製造が好まれている。

そこで、焼結工程のロータリーキルンにインバーターを設置しモーターの回転数を上げれる、

プーリーを増設してローターリーキルンの回転数を上げるのいずれかの方法を選択すれば、

粘土粒がキルン内の高温空間を通過する時間を短くできる。造粒の大きさにより調整も可能となる。

また時間を調整すことで軟破砕品から硬質品まで自在に作る事が可能となり目的が達成できる。

一方、レンガ方式はレンガと同じ作り方をする。

利点はあまりない。焼成体がレンガの大きさになると大きすぎて温度管理ができない。

破砕工程が必要でコストがかかる。最も重要な問題であるレンガ全体に連続気泡ができるか疑問、

連続気泡の分布バラつきがあれば製品の性能低下となりコストパフォーマンスが悪い。

ここに至るまでに交渉・調査を続けてきたが、

中国側との交渉には理屈だけでなく、意見を言い出す前にどれだけ中国側のメンツを保って同意できるように

道筋を事前交渉しておくか重要であることは良く判っているが、技術交渉では決裂して解散後に、

こちらの方法を採用して実用化する事も、またその逆も有り技術支援の難しさが浮き彫りになる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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