キリンソウと四季の彩り日記屋上緑化システム株式会社
技術顧問 山下 律正
技術レポート 白花タケシマキリンソウが発見されないのはなぜか。その安定化技術への挑戦
白花タケシマキリンソウが発見されないのはなぜか。その安定化技術への挑戦
タケシマキリンソウが市場で注目を集めてから20年近くなる。この間に種苗登録申請された品種は20種近くに達するが、白花で登録申請されたタケシマキリンソウは無い。
タケシマキリンソウの研究者である筆者は、これまで数千体試験を行い百例近い突然変異体を作出してきたが、白花タケシマキリンソウが作出できたのは数件のみである。セダム種のツルマンネングサ、メキシコマンネングサ、タイトゴメでも数例作出しているが、葉の変異体、草姿の変異体の発生数に比べ圧倒的に少ないと言える。
では、なぜタケシマキリンソウの花色変異体の発生が少ないのかを育種の立場から考えてみた。
原因としては、用いる化学変異剤が花色の遺伝子に対し効果を示さない。あるいは変異剤の種類が合っていないと考えられる。
ここでは、現在使用している化学変異剤での結果を踏まえ、発現した白花タケシマキリンソウのクローン作製の挑戦について紹介する。
一般のタケシマキリンソウのクローン作製は、非常に簡単に出来る植物種に分類される。
大抵の場合、処理の仕方より逸脱しなければおおよそ可能であるが、白花タケシマキリンソウについては大きく異なる。
その原因は、遺伝子の自己修復が原因と考えている。
生物は遺伝子が複製間違いをした場合、自己修復をすることができる。間違えた対合するアミノ酸を元に直す作業、断片化された遺伝子を元の配列に直す作業その他正常な状態に直す自己修復作業であり、内容は専門書を参照頂きたい。
タケシマキリンソウの花色変異はこの自己修復がされ易い箇所と言える。白色を作出してもクローン世代を重ねるに従い、元の黄花が出現し最後は黄花に自己修復される。
これを阻止するためにいろいろの方法で定着試験を繰り返しているが、世代を繰り返し安定して変化しない変異体を作り上げる試験手法を模索中である。
遺伝子組み換え技術を使わず突然変異のみで実現する難易度に研究の興味を感じると共に、生物の種の安定に向けた驚異の力に感動を覚える。
写真 白花クローン育種試験
白花系種安定化試験
2025年5月6日
屋上緑化システム株式会社
技術顧問 山下 律正
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