壁面緑化設計ノート屋上緑化システム株式会社
技術顧問 山下 律正
躯体へ影響を与えない壁面緑化の方法とは
躯体へ影響を与えない壁面緑化の方法とは
新築での壁面緑化工事は外壁塗装終了後実施される事が多い。現場打合せで最も多い協議事項は、設置位置確定、壁面緑化終了後の緑化周辺工事の有無と注意事項、給水本管・仮設配管の準備状況、給排水の接続時期、足場等の確保、取付方法と防水処理、設置範囲内の役物回避法、植栽時期、引き渡しまでのメンテナンスが主となる。
本節では植栽ネットタイプ、SUSワイヤータイプ、パネルタイプの緑化を設置する場合に多く寄せられた質問より3件を取り上げて解説をします。
躯体への質問で最も多い質問は
1 漏水対策
2 植物の躯体内への進入
3 害虫・昆虫の集合問題
これらの対策について解説します。
1 漏水
アンカーピン関連作業の注意点では
ワイヤーメッシュ工法、ワイヤーメッシュ+ヤシマット工法で経年後に発生する漏水対策は必ず確認事項となる。
壁面緑化では機材を壁面より10cm 程度離して設置するが、この間隔が狭いと、ヘデラ類などの茎が太る種ではワイヤーメッシュの表側より裏の壁面側に枝を張る事が多い。これは新芽の成長が狭い空間などで絡んで成長しやすい点と、維持管理で表面側を刈込むことで背面の芽に栄養分が回され成長が促される点にある。背面に繁茂が進むと、交差した太った枝がワイヤーメッシュを押し上げアンカーピンが抜けたり、圧力で周辺にたわみが出来たり隙間ができたりします。
エーエルシーアンカー(ALCパネル用)
アンカーピン穴内と座金部分に防水用シーリング材を塗布する
緑化による漏水発生の原因は、アンカーピンを固定した壁面周辺に発生するひび割れが考えられます。 工事では、シーリング材、防水材をアンカーピン挿入前に穴に塗布してからピンを挿入するので施工不良で発生する事は少ないですが、経年変化で壁面に割れが発生する場合があります。
2 植物の躯体内への進入では
壁面のクラックの問題点
吸着根を発生する木つた、ヘデラ種などの植物では、壁面に発生したクラックを足掛かりにして登坂する事がある。クラックや下地から水分がしみだしている箇所では、吸着根は水分に向かって伸びる特性があり、侵入してクラックを広げる場合がある。登坂型壁面の躯体は吸着根の進入対策としてモルタルの表面押さえをする、上塗りをかける、誘発目地を作らない等のクラック対策が必要です。また排水口、窓、収縮クラック等の足掛かりとなる場所を作らない、あるいは近くを緑化しない、する場合は対策を最初に講じる配慮が必要です。
ガルバニウム鋼板壁面の凹溝につる植物が成長した状態
3 害虫・昆虫の注意点では
植物が繁茂すると風通しが悪くなり病気が発生します。
昆虫類は日陰を求めて集まり易く、周辺の清掃も重要な要素となります。緑化区画の周辺は地際の混植は避けて土壌を広く開けておくのも効果的です。
例としてヘデラ種では、害虫の発生は少ないですが、発生すると樹を弱らせるのと、見た目が不潔に見え、振れると粘着物が付くので早く防除が必要です。春から秋はアブラムシ・ハダニ・カイガラムシの発生に注意します。
屋上緑化システム株式会社
技術顧問 山下律正